もくまおうです!
今回は、本屋大賞2023年受賞、凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」を紹介します。
この小説は、「恋愛小説」の一言では片づけられません。
2人の主人公、井上暁海(いのうえあきみ)と青埜櫂(あおのかい)。
2人が親に振り回され、もがき続け、何度でも読みたくなる名作です。
そんな「汝、星のごとく」で学んだことを3点紹介すると、
①誰かに遠慮して大事なことを諦めたら後悔するかもしれない
②思い出の価値は人によって異なる
③たった一粒の星ですら見方がちがう
の3点になります。
誰かに遠慮して大事なことを諦めたら後悔するかもしれない
物語は暁海と櫂の17歳から始まります。
瀬戸内の島に住む暁海は櫂は2人とも母親との2人暮らし。
暁海の父は、他の女性と不倫をして家出。櫂の父親は櫂が生まれてすぐ亡くなりました。
櫂の母親は常に男の出入りが激しく、京都で知り合った男を追って、瀬戸内の小さな島へやって来ました。
2人の家庭内にはそれぞれ問題があり、同じ境遇にいることから惹かれ合い、そして付き合い始めます。
やがて暁海は東京の大学に行きたいと考えるようになります。
母親にお願いするも反対され、それどころか夫(暁海の父親)と一緒で勝手だと言われてしまいます。
暁海はお金を出してもらうため、櫂と一緒に父親に会いに行きます。その時に不倫相手の瞳子が、自分の責任だからお金を出すと言うのです。
この時のエピソードを引用します。
「誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない。でもわたしの経験からすると、誰のせいにしても納得できないし救われないの。誰もあなたの人生の責任を取ってくれない」
引用:汝、星のごとく(第一章 潮騒)
・誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、後悔するかもしれない
・誰も自分の人生の責任を取ってくれない
この2つの言葉が突き刺さりました。
瞳子が原因で暁海の家庭が壊れたのにも関わらず、暁海の良き相談相手となります。
そして、瞳子が悪役にはならないのがこの小説の不思議なところでもあり、魅力でもあります。
小説のクライマックス、暁海は大きな決断をします。
このエピソードは、その時にも思い出せる深い言葉です。
思い出の価値は人によって異なる
とある一件をきっかけに、暁海は結局島に残ることになります。
櫂は、漫画や小説を投稿するサイトで久住尚人と出会い、櫂が物語担当、尚人が漫画担当で、共作で漫画を作っていました。
その漫画が連載開始になることになり上京します。
こうして遠距離恋愛が始まります。
櫂たちの漫画はやがて大ヒット。
櫂は東京に3LDKのマンションを買うほどの人気漫画家となりますが、次第にすれ違いが生まれてしまいます。
この時の暁海の心境がとても考えさせられます。
櫂はなんでも買ってくれるようになった。服もかばんも指輪も、コンビニでジュースを買うようにひょいひょいと。その気軽さに乗れず、わたしだけが高級な店内で緊張していた。櫂に連れられて、初めてクラブという場所にも行った。みんなおしゃれで、わたしが今日のために奮発したスカートは野暮ったく見えた。
フロアを見下ろせる一段高い場所にあるVIPルームでも、二件目の会員制バーでも、櫂がすべての会計をすませた。高そうなお酒が次々空くのを横目に、ふたりで飲んだ一本千円しないウイスキーの味を思い出している自分を惨めに感じた。
ーあっちのほうがおいしかった。
なんて言えない。それは思い出の味で、思い出の価値は人によって異なる。
引用:汝、星のごとく(第二章 波蝕)
櫂は人気漫画家となり、暁海は人気漫画家の彼女となりました。
しかし、暁海にとってそんな名誉はいらなかったのです。
大事なのは地位やお金ではない。
一番大切なのは「思い出」なんですね。
どんなに高い物を手に入れようが、高いお金を払って経験しようが、それが価値ある思い出に繋がるわけではないことを教えてくれます。
たった一粒の星ですら見方がちがう
暁海と櫂17歳の時、2人で初めて夕星(ゆうつづ)を見てから、この小説では何度か夕星を見るシーンが出てきます。
先ほど紹介した通り、小説のクライマックスに暁海はある決意をします。
今後どうなるんだろうと考えている時に、夕星が現れます。
その時の暁海の心境が深いのです。
ーああ、夕星
昼と夜のあわいの中で輝く星に一日の終わりを重ねて惜しむのか、もうすぐ訪れる夜を待ち遠しく想うのか。たった一粒の星ですら見方がちがう。わたしはこれからどんな選択を繰り返していくのだろう。どうか、それをまっとうしていけるようにと星に願った。
引用:汝、星のごとく(第四章 夕凪)
同じ夕星でも捉え方は変わるのです。先ほどの思い出の価値は人それぞれ違うのと同じように。
しかし、この時の暁海は櫂にクラブに連れて行かれた時とは心境が全く違います。
自分が決意したことに対して祈りのように感じます。
まとめ、書評
以上、「汝、星のごとく」から学んだことを、
①誰かに遠慮して大事なことを諦めたら後悔するかもしれない
②思い出の価値は人によって異なる
③たった一粒の星ですら見方がちがう
の3点紹介しました。
とにかく、凪良ゆうさんの表現力がすさまじく、これでもかってくらい染みる言葉がたくさんありました。
読んだ方には少しでもあのシーンだなと思い出してもらえたら嬉しいですし、読んでない方は少しでも興味持っていただけたら幸いです。
この小説では何度も、「娯楽の少ない島民共有の現在進行形リアル・エンタテイメント」という表現が出てきます。要は「噂話」ですね。
暁海も物語の最初では気にしていましたが、最後の方では「他人事のように聞き流すことができる」とまったく気にしていません。
暁海と櫂の物語は、そんな世間の目に屈することもない儚く美しい物語でした。
最後までご覧いただきありがとうございました!
※本屋大賞は、他にも2021年受賞「52ヘルツのクジラたち」、2024年受賞「成瀬は天下を取りに行く」も紹介しています。こちらもぜひご覧ください!
コメント